正直なメモリー
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作者:工藤由行
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◆さわり
「ありがとう。おかげで助かったわ」
初対面とは思えないほど慣れなれしい言葉でそう語りかけてきた。
会社を出て100メートル程歩いた先にあるカフェの一角。私の目の前には今日初めて会う女性が座っている。やや濃い目の化粧、黒のスーツに白いブラウスという何かに勧誘されてしまいそうな装いだったが、違和感はなかった。見上げていたはずの彼女が椅子に座ると目線が低くなっていることに気づく。しばらくしてから、靴のヒールが高かったのだと理解した。
「拾ってくれたのがあなたでよかった。男だったらどうしようかと思っていたのよ。面倒な話になったりするでしょう?ま、全員がそうというわけじゃないけどね。とにかく、あなたには本当に感謝してるの」
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