あの日君の後ろで
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作者:松村比呂美
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◆さわり
貴志はわずかな力で制止を振り切ると補助を受けてバーにぶら下がった。前後に揺さぶる体は小刻みに震え、見る者には終末へと向かうカウントダウンを想像させた。気の勢いにまかせた貴志の大車輪は無理な体制のままに空を切っていく。そして、左腕を離し半身になった瞬間、それまで熱気に包まれていた会場が一気に凍りついた。その直後、ドスン…!という鈍い音とともにタカシが床に叩きつけられる。
「ああぁ!」
会場のどこかで見守るミキの悲鳴も聞こえたような気もする。
2人の勝負はそこで終わっていた。
意識がないままの貴志を乗せた救急車にはトオルも付き添った。午後の雨は激しさを増し、渋滞の列が行く先を阻んでいる。30分かけて着いた病院に入るやいなや、そのまま治療室へと担ぎ込まれてしまった。短い廊下のイスに腰掛けながら医師の診断を待っていると、ミキが息を切らして走ってきた。
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