★居場所★
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第12話

姑の隣の座布団が空いており、それを見つけた千香が座ろうとしたが、姑がそれを制して、後ろの席に行くように指示した。当然だ。その席には私が座るのだから。姑に目で促され、私は、隣の座布団の上に座った。
僧侶の読経が始まっても、宏之は姿を見せなかった。何か特別な用があったのだろうか。再び思い出そうとしたが、やはり、頭が割れそうに痛くなる。
友紀子は、考えることを諦めた。もしかしたら、交通事故に遭った後遺症だろうか。姑が優しくなったのも、そのせいかもしれない。今までの頭痛は、精神的なものが原因だと言われて、姑は、そのことが気に入らなかったのだ。今度は、交通事故という大きな原因があるから、友紀子が広縁でうずくまっていても、きつい言葉を言わなくなったのだろう。友紀子の顔を見ると、休んでいなさい。ゆっくりしなさい、と言ってくれる。
友紀子は、僧侶が唱える読経を聞きながら、両親のことを思い出していた。 
友紀子の両親は、友紀子が中学一年生の時に、商売の失敗で膨らんだ借金を苦に、自らの命を絶ってしまった。   
友紀子は両親のことを思い出そうとすると、かならず、鴨居からぶら下がった四本の足が目に浮かぶのだ。
母の姉である伯母が、友紀子を引き取ってくれたが、伯母は、妹夫婦が莫大な借金を残して自殺したということだけでも肩身の狭い思いをしたようだ。その上、その娘である友紀子の面倒をみるはめになったのだから、自分の夫に対しての気の遣い方は尋常ではなかった。

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