★居場所★
★。、:*:。.:*:・'゜☆

第13話

酔っぱらった伯父がふざけて友紀子に抱きついても、伯母は伯父をたしなめたりせずに、友紀子のほうを睨み付けたりした。常に伯父の機嫌ばかりを取っていた。
しかし、伯母以上に肩身の狭い思いをしていたのは、当然、友紀子だった。学生時代からアルバイトもしたし、家の手伝いも必死でやった。就職してからは、従姉妹達が遊び歩いている時も、自分だけは遊びにも行かず、給料の大半を伯母に渡していた。その頃から、伯母は機嫌のいい日が多くなり、友紀子の生活も少しだけ落ち着いてきた。
それでも伯母は、「友紀ちゃんは、いいお嫁さんになれるわね」と言い続けて、早く家を出ていかせたかったようだ。友紀子も早く独立したかったが、手元に残るわずかな給料では、真由美と喫茶店に行くのがやっとだった。
それを救ってくれたのが、職場で知り合った宏之だった。何も持たずに来てくれたらいい、という言葉がありがたかった。伯母に結婚の準備をしてもらうことなど、頼めるはずがなかったし、伯母もする気はなかっただろう。
昔のことを考えている間に、僧侶の読経が終わり、会食が始まった。
 友紀子も台所へ入り、酒を運ぼうとしたが、すぐに近所の主婦たちに仕事を奪われてしまう。
何もできないまま、台所と会食の席を行ったりきたりしているうちに、客は、ひとり減り、ふたり減りしていった。
千香も、飛行機の時間に間に合わなくなる、と、慌てている。
「今度は東京にも遊びにきてくださいね。マンションの三十階は見晴らし最高ですよ。ゲストルームがないから泊まっていただけないけど、近くにいいホテルがあるから、料金こっち持ちで部屋を予約しますから。彼も喜ぶと思います。じゃあ、また」
 千香は、馴れ馴れしい口調で姑に言い、呼びつけたタクシーに乗り込んだ。
 千香は、東京で、高層マンションに住んでいるようだ。姑をそこへ招こうとしているのだから、よほど深い付き合いなのだろう。
 客が全て帰り、大きな屋敷に残されたのは、姑と友紀子だけになった。

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