★居場所★
★。、:*:。.:*:・'゜☆

第14話

「疲れたでしょう? 部屋で休んでちょうだいね」
 姑は友紀子の顔を遠慮がちに見て、目を細めた。
「ありがとうございます……」
 友紀子は部屋に戻ろうとしたが、なぜか、足は広縁に向いてしまう。自分はよほどここが好きらしい。
冷たい板張りにしゃがみ込み、ぼんやりしていると、電話のベルが鳴った。
友紀子はそっと姑の部屋に近づいた。襖越しに聞こえてくる姑の声は渇いていた。
「何を考えているの。父親の法要にも帰らないで」
 どうやら電話の相手は宏之らしかった。姑が怒るのも無理はない。どんな仕事があろうと、父親の法要に欠席するのはよくないと思う。
「千香さんを寄越して、それで済んだと思っているの」
 千香さんを寄越して? どういうことだろうか。千香は、宏之が頼んで来てもらったというのか。
「友紀子さんがかわいそうじゃないの」
 自分の名前が出て、友紀子の胸は高鳴った。かわいそう、とは、どういうことか。
「帰ってきてほしいなんて思ってないわよ。ひとりのほうがどれだけ気が楽か。それに、あんな近代的なお嫁さん、こっちで務まるわけないじゃないの。最初からあの人には無理だと思っているから、私も辛抱して何も言わないようにしているのよ。この家を任せたいと思ったから、友紀子さんには色々言ってきたんだもの。私は、千香さんとは一緒に暮らせないからね」
 姑の言葉の意味がわからない。近代的なお嫁さん? 千香と一緒に暮らせない? 帰ってこなくていい?
 考えようとすると、頭痛はますますひどくなる。

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