★居場所★
★。、:*:。.:*:・'゜☆

第3話

 そうだ。友紀子は宏之を愛している。何も持たない友紀子に、身ひとつで来てほしいと言ってくれた人だ。結婚してからも少しも変わることなく、友紀子を大事にしてくれる。
 この人を産んでくれた人だから、姑のこともきっと愛せるに違いない、大事にしよう、仲良くしたいと、精一杯の思いで宏之についてきた。
 実際、あっさりと結婚は認められた。宏之の兄が、ニューヨークに行き、そこでアメリカ人の女性と結婚してしまったせいもあるだろう。期待していた長男に裏切られたと姑は思っているようだ。兄嫁は、結婚を反対している人には無理に祝福してもらわなくてもいい、という考えの持ち主らしく、挨拶にも来ていないという。子供が産まれても、写真ひとつ送ってこないそうだ。
 そんな所へ宏之が友紀子を連れて里帰りしたのだ。宏之は、友紀子と結婚したら、こちらで仕事を見つけ、友紀子と共に家に入ると言った。その条件があれば、両親を早くになくした女でも許せたのだろう。
 旧家の跡継ぎが、昔のようによい条件ではなく、逆に結婚の難しい条件になっていることは、姑も少しはわかっていたようだった。
 結婚して家に入ってからは、友紀子が姑に注意されて落ち込んでいると、宏之が、「友紀子が悪いんじゃない。お袋は、誰でもだめなんだ。友紀子はよくやってくれている、ほかの女性だったら、最初から務まらないよ」と言って、友紀子をなぐさめてくれた。
 しかし、宏之は、なぜか、土日で東京へ出張することが多く、そうなると、友紀子は、姑とふたりきりで、心が休まらない週末を過ごすことになってしまうのだ。

次へ前へ

戻る